木材保存誌コラム

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木材保存誌コラム

わたしは蚊に刺されやすい

虫めがね vol.49 No.3 (2023)

わたしは蚊に刺されやすい体質だと自分では思っている。夏の夕方に近くの盆踊りを見に出かけると、腕のあちこちが赤く腫れて痒くてたまらない。周囲にいる人たちを見ると大して蚊などは気にせずに盆踊りを楽しんでいる。また、夕涼みを兼ねて散歩に出かけると、同じように腕や脚が刺される。昔の話になるが、わたしが仕事でイタリアに出張した時に、夕暮れ時に屋外で仕事をすることになった。夏だったので半袖シャツを着ていたが、わたしは両腕のあちこちが蚊に刺されて"ぷくっ"と赤く腫れて痒くてたまらなかった。一緒に仕事をしていた同僚のイタリア人男性はわたしの腕を見てケラケラと笑っている。彼は何ともないらしい。

蚊は人から吸血する際に口吻の針を人の皮膚に刺し込むと、目的をスムーズに達成する為にまず針を通して唾液を人体に注入する。この唾液には人が吸血されているのを感じさせないように局所麻酔剤や、吸血中に血液が固まらないように血液凝固抑制物質、それに消化液などが含まれている。これらの物質(タンパク質)は吸血される側の人体にとっては異物であり、その異物に対するアレルギー反応として人の皮膚は赤く腫れて痒くなる。アレルギー反応なので異物を攻撃しようとする免疫機構が働いてIgE抗体ができる。この免疫反応には個人差があって刺されると過敏に反応する人や無反応の人もいるらしい。無反応の人は当然赤く腫れないし痒くはならない。

蚊が人に近づくのは、遠方からは人の呼気からでる二酸化炭素や体表から出る汗などの水分、汗に含まれる乳酸やオクテノールに誘引されて近づく。ある程度近づくと、人の体温や色を感知して近づく。肌の色は白いよりも黒い色(黒人や日焼けした人)に惹かれるようだ。

つまり、蚊に刺されやすいと感じている人は蚊を誘引しやすくて、さらに刺された後の免疫反応の敏感さの両方が関与しているようだ。

わたしの場合、イタリアの例ではイタリア人(白人)よりわたし(黄色人)の方が肌の色が黒いので刺されやすいと言えるかもしれないが、日本でも盆踊り見物などで刺されやすいと感じるので、体表からでる汗や呼気に含まれる誘引物質が多いのと免疫反応の過敏性によるのではないかと思っている。

♪順風に逆らい飛ぶか赤蜻蛉

(赤タイ)

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殺虫剤を使わないで害虫駆除はできますか?

虫めがね vol.49 No.2 (2023)

あるセミナーで「生活害虫とその対策」と言う演題で講演をした。わたし達の身辺にいるハエ、蚊、ゴキブリ、蚤、シラミなどの生活害虫駆除がテーマである。このような時によくある質問は、

「殺虫剤を使わないで害虫駆除は出来ないでしょうか?」

である。このような質問が出ると、申し訳ないが、わたしはいささかうんざりする。なぜなら、この質問者は、「殺虫剤は悪玉で、使わない方が良い」という先入観が背景にあっての質問と思えるからである。わたしは殺虫剤を悪玉とは思っていない。たとえば、人が病気になった時に医者からもらって飲む医薬品にも、病気を治す善玉もあれば、使い方によっては、人体に害を与える悪玉もある。同じように、害虫駆除に使う殺虫剤にも、害虫を駆除してくれる善玉もあれば、使い方によっては人の健康に悪影響を与える悪玉もある。

このような質問があった時には、

「殺虫剤を使わない害虫駆除の方法はあります」

と、まず答えることにしている。そして、たとえば、人が病気になった時に、医薬品を使わないで治そうとする場合、どんな手段があるでしょうか。まず、日々の食事の改善、適度の運動、規則正しい生活、それに、針・灸・マッサージや温泉療法なども考えられる。しかし、これらの方法は、対象となる病気には限界がある。どんな病気でもこれで回復と言うわけにはいかない。更には、軽度の症状には効果があっても、かなり進行した病気には、これらの方法では不十分だろう。同じように、害虫駆除にも、ハエ叩きで殺したり、ハエ取りリボンのような粘着シートで捕獲したり、光による誘引捕殺器や、ゴキブリやトコジラミなどを真空掃除機のようなもので吸い取って除去する方法や、蚊の幼虫(ボウフラ)が生息している湖沼などにカダヤシやグッピーなどの小魚を放流してボウフラを食べさせたり、また、庭に鶏を放し飼いにするとハエの幼虫(ウジ)を食べてくれる。家屋の窓を網戸にしたり、蚊帳を使用して蚊から刺されるのを防ぐ方法も可能である。しかし、これらの方法も対象害虫に限界があり、また、何らかの理由で害虫が大発生した時にはお手上げである。そんな時には、やはり殺虫剤に頼らざるを得なくなる。

最近の考え方は、「総合的有害生物管理」(Integrated Pest Management)と言って、殺虫剤を使わない方法と殺虫剤を使う方法の両者の長所を組み合せて、有害生物を管理しようという方向です、と説明して締めくくっている。

♪不満など言わずに蟻は列を行く

(赤タイ)

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疫病大流行と社会変革

虫めがね vol.49 No.1 (2023)

中国武漢発の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が流行ってからすでに三年余り経つ。このパンデミックは人々の生活のやり方や政治に変革を強いている。大学の授業ではオンラインを取り入れているし、入学式・卒業式などは本人だけの出席でやったり、同窓会、忘年会、新年会などは中止が増えた。葬式も少人数で行う家族葬が増えた。電車やバスに乗っても皆さんはマスクをしており、以前のように隣席の人とのおしゃべりに興ずる姿は少ない。会社の業務も、営業などの対面が必要な部署を除きテレワークによる自宅での業務が認められ、会社には週に数日顔を出せば良い所が増えた。また、自宅に居ることが多くなり、犬や猫などのペットの飼育頭数が増えた。三密、黙食、クラスター、ロックダウン、ソーシャルディスタンスなど、使い慣れない言葉が定着した。 まだまだ変革は続くだろう。

今から約一三〇〇年前の天平時代にも疫病(天然痘)が大流行した。天然痘はインドが発源地で、インドの仏教の伝播と同じルートでインドから中国へ、そして新羅へ伝播し、九州に侵入したと考えられている。当時、新羅と日本は遣新羅使の派遣や、商人、漁民など人や物の交流が活発に行われており、天然痘はその玄関口である九州にまず侵入した。九州から東進し、当時の首都平城京や畿内以東にまで蔓延した。三年(七三五-七三七年)続いた疫病で当時の日本の総人口約五〇〇万人中一〇〇-一五〇万人(二〇-三〇%)もの人々が亡くなったと「続日本記」に記載されている。時の為政者 聖武天皇は都を平城京から難波京(今の大阪市)へ避難させた。そして仏教に救いを求め帰依を深めていった。諸国に国分寺を建立し、奈良には東大寺を起工し、東大寺大仏の鋳造を命じた。また、中国から高僧鑑真を招聘し、唐招提寺を建立した。やがて平安時代には遣唐使として派遣されていた最澄が天台宗を、空海が真言宗を開き、仏教文化が開花した。

この時、農地を耕作していた大勢の農民が亡くなったため、農地が放棄され、食糧不足が起こった。やむなく農業の生産性を回復させようと「墾田永年私財法」を施行し、農民に土地の私有を認めた。これは土地がすべて国家のものであった律令制が崩壊し、のちに有力貴族や寺社が広大な荘園を持つようになり、貴族政治への変革となる。

天然痘は一七九八年にイギリスのジェンナーが「牛痘」を用いたワクチンを開発し、今では人類社会から消滅したが、天平時代には、そのような方法は無かった。死者も多く疫病に対する民衆の恐怖感も強かったであろう、それ故、社会の変革も桁違いに大きかったことが分かる。

♪テレワーク枯れた頭が追い付かぬか

(赤タイ)

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スズメバチ退治

虫めがね vol.48 No.6 (2022)

ことしの七月に、わが家の二階の軒下にスズメバチが巣を作っていた。コガタスズメバチである。コガタスズメバチの巣は大きくなると直径三十㎝くらいになるが、わが家の巣はまだ営巣途中のようで、直径十五㎝くらいである。スズメバチは大変危険な昆虫で、わが国では毎年十数人が刺されて亡くなっている。今の日本で最も危険な野生動物は、北海道のヒグマでも奄美や沖縄のハブでもなくスズメバチだと言われている。

数年前に隣家の軒下にスズメバチが巣を作った。この時は、スズメバチ駆除の専門業者に頼んで、巣を駆除してもらっていた。わが家の二階の窓からよく見えたので、駆除の状況をじっくり観察させてもらった。三人の業者がやって来た。二人は頭にヘルメット、全身は白の防護服で、まるで宇宙服のような格好で屋根に上り、ハチの巣めがけてハチエアゾールを噴射していた。噴射中もハチはあたりを激しく飛び回り大変危険な状況であった。しばらくするとハチの活動も治まり、静かになったので、大きなハチの巣を除去して持ち帰った。この間、一時間あまりであったろうか。

スズメバチ駆除を専門業者に頼むと駆除費用が数万円必要と聞いた。わが家のスズメバチの巣はまだ小さいので自分で駆除することにした。まずホームセンターでハチ用エアゾールを二缶買ってきた。これはハエ・蚊用エアゾールと違って噴射殺虫液が直線状に七~八mも到達できるように設計されている。わたしは頭には蚊対策用に市販されている網付きの帽子をすっぽりかぶり、上半身は白の長袖ワイシャツ、手は軍手を付け、一応の防護体制は調えた。夜の九時半過ぎ、スズメバチが活動を停止した頃、二階の窓から上半身を乗り出して、約二m先にあるハチの巣目がけてエアゾールをたっぷりと噴射した。

翌朝、外に出ると五頭のスズメバチの死骸が転がっていた。翌日もまだスズメバチが巣の周囲を飛んでいたので、夜になって同じようにハチエアゾールを噴射した。三日目も数頭のスズメバチがいたので、同じように夜になって噴射した。四日目はさすがにスズメバチの姿は認められなかったが、念のために再度噴射した。合計四回の噴射で見つけた死骸は九頭であったが遠くに逃げて死んだのもあろうから、実際はもっと沢山のスズメバチがいた筈である。その後、十月の今に至るまで軒下にスズメバチの姿は見ないのでスズメバチ退治は成功したと思える。

わが家のスズメバチ退治が終わって約一ヶ月後に、今度はわが家から数軒先の家にスズメバチの巣が見つかった。ここでは換気扇の中に巣を作ったようで、除去は難しく専門の業者に依頼して除去してもらったようだ。

♪柿熟れた 烏が知らす甘い時期

(赤タイ)

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グラウンド・ゴルフの楽しみ

虫めがね vol.48 No.5 (2022)

わたしが今の住所に引っ越した頃にテニスを始めたので、今では三〇年近く近所の仲間とテニスを楽しんだことになる。ところが今年に入って、テニスのプレー中に左脚の肉離れと内出血を起こし、約一ヶ月間苦しんだ。それが治りテニスを再開したら、今度は脚が縺れて転倒するなどの事故が起きた。そんなことが続き、そろそろ高齢化による体力の限界かなと自覚するようになった。それで週二回ほどやっていたテニスをしばらく休むことにした。

長年やってきたテニスを止めるとなると運動不足となり健康上良くない。いろいろ考えた結果、日頃からテニスコートの隣の運動場でやっており、以前から見て知っていたグラウンド・ゴルフを始めることにした。

わたしが参加している地元のグラウンド・ゴルフ同好会は会員の平均年齢は恐らく七〇歳を優に超えると思える高齢者の同好会である。しかも女性会員が半数を超えるくらい多い。毎週月曜日と木曜日の午前中に競技を行っているが、毎回ほぼ四〇~五〇人の参加者があり盛況である。

グラウンド・ゴルフは約四〇年前に、高齢者の健康づくりを目的として鳥取県泊村で生涯スポーツ活動推進事業として、創案された新しいスポーツである。「いつでも」「どこでも」「だれでも」できるスポーツを目指している。高齢者はもちろん、脚に少々障害があっても両腕が振られれば可能であり、そういう人も参加して一緒に楽しんでいる。

わたしはグラウンド・ゴルフを始めてまだ数ヵ月なので、詳しくはないが、逆にいろんな発見がある。まず、参加者は高齢者が多い。若者には物足りないのだろう。しかし、ゴルフと違って高齢者用のゴールド・ティや女性用のレディス・ティはなく、みんな同じ場所からスタートする。ゴルフのようなハンディキャップもなくみんな平等、対等である。それでも高齢の女性が男性陣を抑えて堂々優勝しているのは素晴らしい。ご夫婦でプレーに参加している人も多いが、奥様がご主人の成績を上回る例も多い。ジェンダー・ギャップは全くない非常に民主的スポーツである。

ゴルフには無いルールで、ホールインワン(一打でホールに入ること)を達成するとスコアを三打マイナスできるというのがある。これは大変魅力的なルールで、参加者は何とかホールインワンを捕ろうと競い合っている。わたしは習い始めの初心者であるが、すでにホールインワンをいくつか捕った。

♪グラウンド・ゴルフ続けて 加齢逃げていく

(赤タイ)

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