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"わかめ"の長寿犬表彰
虫めがね vol.39 No.5 (2013)
わが家に満十八歳になる"わかめ"という名のメス犬がいる。名前は漫画「サザエさん」の家族のわかめちゃんから拝借した。人間で言えば百歳を超えるというので、二年ほど前に阪神開業獣医師会から長寿犬として表彰状と盾をもらった。表彰状には、「あなたは人生の伴侶として、永年にわたり家族に喜びと楽しみを与えてくれました」と表彰の理由が書いてあった。本人はなにもわからないだろうから、好物の鶏のササミ肉のジャーキーを与え、表彰状・盾と並べて記念写真を撮った。
ところが、元気だったこのわかめが、このところ老化が激しく、とみに弱ってきた。かっては、仕事を終えて我が家に帰ってくると、その足音を聞きつけて、尻尾を振りながら、「ワンワン」と飛び出してきたものだ。ところが最近は、足音はおろか、玄関のドアを開けても、まだ気づかずに眠っている。ドアをガチャンと閉めると、その音で初めてゴソゴソと起きだして、尻尾を振って近づいてくる。衰えたのは聴覚だけではない。視力もかなり老眼のようだ。女房が散歩に連れているのを見つけて、遠くから、「わかめ」と大声で呼んでも、しばらくじっとこちらを見つめてようやく気が付く様子である。また、犬の最大の武器であるはずの嗅覚も衰えた。わかめの好きなササミ肉のジャーキーをやるとかぶりつくが、歯が弱ったのか、一口で食べられなくなり、足元へポロリとかけらが落ちる。自分の足元にあるのに、鼻先であちこちをフンフンと嗅ぎながら、落ちたジャーキーを探している。以前のわかめなら落ちたジャーキーはたちどころに見つけてペロリであったが、今は目でも見つけるのに時間がかかるし、嗅覚でもわからないらしい。
今年の夏は格別の猛暑である。ある時、ふと見るとわかめが疲れ切ったようすで寝ている。「わかめ!」と呼びかけても動こうとしない。抱きかかえてもぐったりしている。急いで氷をタオルでくるんで、首回りに当てて冷やしてやったら、しばらくすると元気になった。熱中症らしい。農家のお年寄りが、ビニールハウスで作業中に熱中症にかかり、救急車で病院に運ばれたが、不幸にして亡くなったというニュースを時々聞く。犬には人間のような汗腺がないので、汗をかいて体温を調節することができず、ますます熱中症にかかりやすいであろう。獣医さんにこの話をしたら、老犬が熱中症で亡くなることが多いそうである。エアコンが効いた涼しいところで飼ってくださいと言われた。
(赤タイ)