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カーボン・なんとか・6
みちくさ vol.48 No.6 (2022)
前回、「植林によってどのくらいの二酸化炭素が吸収できるか」という問題に触れた。その原稿提出後、森林総合研究所が「ネットゼロエミッション達成のための森林の役割」と題した公開講演会をネットで配信されることを知り、早速聴講を申し込んだ。そしてこの模様を収録した動画のオンデマンド配信(YouTube)とQ&Aの公開が行われている。
講演会ではまず、近畿大学農学部の松本光朗教授の基調講演「カーボンニュートラルに向けて森林・林業・木材産業は何ができるか?」に始まり、次いで「林業の機械化と効率化」「林木育種」「木材、木質材料の利用」「木質バイオマスエネルギー」に関する各課題を研究所内の専門家が話す、というスタイルで進行されていた。興味のある方は配信版をご覧いただきたい。
ここで松本先生はいわゆる「カーボンニュートラル達成」に向けて木材の土木建築への利用の重要性を強調されていたように思う。
これに関してはQ&Aの中でいくつかの討論があって「長い時間で見れば、森林にある材積と伐採して住宅などに木材の形で二酸化炭素を固定されている地球の全炭素量を増やさない限り、地球上の二酸化炭素を減少させることにはならないのではないか。また森林の二酸化炭素吸収は一時的なものではないか。」また、「〈森林の健全な状態〉とはどのような状態を指すのか。ゼロエミッションの観点からすれば、二酸化炭素固定量(森林の材積量)を最大にすることではないか。」といった質問に対して次のような回答をされていた。
「確かに森林の二酸化炭素吸収が一時的なものであるが、だからこそ、この循環をうまくコントロールする必要がある。その固定量(材積量)の最大化ということになれば、高齢林を多く作ることになる。しかし、二酸化炭素吸収にとっても、また森林の多面的機能(国土防災、水源涵養、生物多様性保全等)にとっても、それは必ずしも適切ではなく、適切に伐採・更新をして若い林分も配置し、炭素蓄積量と吸収量をバランス良く高く維持するなど、総合的にみて森林資源管理をする必要がある。」 実に参考になった。一度覗いてみてはいかが。
(徒然亭)