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カーボン・なんとか・3
みちくさ vol.47 No.6 (2021)
以前、本コーナーで昨年の臨時国会において当時の菅総理が「我が国は、二〇五〇年までに、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、すなわち二〇五〇年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指す」と宣言したことに触れた。
このうち「カーボンニュートラル」の件はすでに話題にしてきたところであるが、もう一つの「脱炭素社会」の方も、よくわからない、不思議な日本語である。
そこで「脱炭素社会は英語ではどう表現しているのだろう」と気になって少し調べてみた。そこであったのは「decarbonize」という語、これを日本語で「脱炭素」と訳しているわけであるが、本来は工学用語での「脱炭」(鋼を空気中で高温に加熱すると表面は酸化されて酸化鉄となり、炭素は一酸化炭素に変わって脱出すること)を意味しているとのことである。
そして、英語圏では「carbon-free」が普通で「decarbonize」があまり使われていないのは、この単語は身近な用語ではなく、「おそらく素人には意味不明の語として認識されているのだろう、またこの語を使った用例の大半が日本発の記事である」とのことだ。
いずれにしろ、炭素循環が明らかなアンバランス状態にあり、ここでの課題はその現状の是正なのだから、例えば「炭素好循環社会」といった言葉に変えてくれないかしら。そうすれば、木材や森林系のみならず、生態系全体での目標が立てやすくなるのではないかと思う。
ところで、今、イギリスで開かれているCOP26、クリーンなエネルギーへの移行について、議長国イギリスが以下の声明を発表した。
「主要経済国は可能なかぎり二〇三〇年代に、世界全体では可能なかぎり二〇四〇年代に、排出削減対策がとられていない石炭火力発電所から移行するため、取り組みを進める。また、こうした石炭火力発電所については新規建設を中止するほか、他国での建設に対する政府による直接的な支援をやめる。」
声明には四十か国あまりが賛同しているが、日本やアメリカ、中国は含まれていない。日本不参加の理由は「資源が乏しく海に囲まれている日本は、多様なエネルギー源をバランスよく活用することが重要だと考え、参加しなかった」だそうな。
(徒然亭)