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カーボン・なんとか
みちくさ vol.47 No.4 (2021)
前回の続きである。
ネット検索したところ、日本総研の経営コラムに「カーボンニュートラルって何?」というのがあった。二〇〇八年八月十九日、村上芽氏の執筆である。
読むと「この言葉は特定の人間活動が大気中に炭素を純増させないことを指す。二〇〇六年のオックスフォード・アメリカン・ディクショナリーが取り上げた。」とあり、このあと「カーボンのフットプリントを小さくしてオフセットしたら、ニュートラルになる」、または「フットプリントをゼロまで小さくしてニュートラルになる。」と続く(お分かりか?)。
まぁ、ここまでは「定義」の話ではあるから、特別の問題はない。しかし、このあと、もう十年以上も前に書かれたとは思えない、まさに現在を予見したかのような内容が続く。曰く、
「最近は、オフセット商品が増え、〈ニュートラルです〉と宣言する活動や企業も出てきている。
このような用語に接するときには、〈何をニュートラルといっているのか、範囲(バウンダリ)に注目する〉〈バックデータが公表されているか、透明性を確認する〉といった視点を持つことをお勧めする。」
とある。当時、既に企業の側では、対象が不明瞭あるいはバックデータ不足などの問題点も指摘され始めていたとのことである。そして「温室効果ガスの大幅削減が急務な中で、このような取り組みを行う企業は少なからず先進的なやる気に満ちているはずで、せっかくなら逆に批判されないようなニュートラルであってほしい。」と結んでいる。
前述の視点のうち、カーボンニュートラルとカーボンオフセットの混同例は論外としても、例えば環境金融研究機構の記事に『経産省の「グリーン成長戦略」文書、引用した英米データの記述に「誤り」発覚。』というのがあるなど、バックデータの信頼性の面でも問題は多いようだ。同記事では『都合のいい情報だけを恣意的に並べ立て、「政府の決定事項」であるかのように装う役所に、エネルギー政策を委ねている政治にも大きな責任がある。』と記載している。
(徒然亭)
日本総研:https://www.jri.co.jp/page.jsp?id=7161
環境金融研究機構:https://rief-jp.org/ct5/109868?ctid=0