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今年のお正月

みちくさ vol.46 No.1 (2020)

いわば「正月」の風物詩でもあった「男はつらいよ」が途絶えてから二十数年。その第五十作「お帰り寅さん」を見に行った。第一作の劇場公開は一九六九年八月だから、それから五十周年でもあるという。

シリーズ主演の渥美清さんが亡くなったのは九六年で、その翌年の正月、地元の新聞に「寅さん」のことを次のように書いていた。筆者、五十歳のときである。

―(寅さんシリーズを)何時頃から見始めたのかはどうもよく思い出せない。少なくとも封切りを見ることはあり得ないので、おそらく一本立て八十円くらいで旧作をやっていた映画館だったと思う。学生には丁度いい値段と時間で、講義をさぼっては、よく行った記憶がある。でもこのときは「寅さん」は、僕にとっての正月映画ではなかったし、当時は「よく分からない映画」だったようで、あまり印象はない。第一、どれを見てもワンパターンだった。同じワンパターンならもっとハッピーエンドになればいいのに、と思った。今、それと同じものを見ても、もっと違った感情を覚えるのは、僕もそれだけ「年喰った」ってことなんだろう。

あの、「わたくし、生まれも育ちも葛飾柴又です。帝釈天で......」が消えてしまった。あれほど「日本のお正月」にふさわしいものはなかったのに。―

寅さんネタは本コーナーでも何回か書いているが、地元紙への正月号への寄稿は、その後も二十年近く続けており、関連した内容を含むものは数回あった。例えば、

―今年は「寅さん・三連発」の優雅な正月になった。シリーズが終わって十年、いまNHKのBSでその再放送をやっている。なにより、作り方が丁寧だ。見ていて、ホッとする。(〇六年)―

―BS・JAPANで「男はつらいよ」の全作品を流し始めた。なかで、SLはじめいろいろな「鉄道」がでてくる。...柴又駅での京成車両の変化も、マニアにとっては面白い。(一四年)―

そういえば、第五十作では現在の柴又駅が五十年前と比較できる。昔は自動改札ではなかったし、入ってきた電車には「押上行」とある。当時は上野・押上まで乗り換えなしで行けたのだった(マニアック過ぎる?)。

まぁ、今年のお正月はよかったと思う。最後のマドンナたちのそろい踏みは素敵だった。

(徒然亭)

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