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木材加工技術協会の古希
みちくさ vol.45 No.4 (2019)
先日、木材加工技術協会の機関誌「木材工業」、その創刊号から昨二〇一八年十二月発刊の八六一号までを収めたUSBが送られてきた。これは同協会創立七十周年事業として作成されたものだそうで、六十周年のときのDVDに比べてはるかに使い勝手が良くなっている。製作に携わった協会の方々に敬意を表したい。
さてその創刊号から逐一読んでいくと大変なことになりそうなので、とりあえず総目次を眺めることにした。
そこでまず引っかかったのは創刊発行日と発行所の件。発刊は一九四六年四月(つまり筆者と同期生!)であるが、発行元は「森林文化会」とある。木材加工技術協会の創立はその二年後の一九四八年三月で、それ以降が同協会の発行になったわけだ。
なお「文化会」は翌年「財団法人林業経済研究所に併合」されることになり、ここに発行部が置かれていた。したがって発行所は二回変更されていたことになるが、いずれの組織も当時目黒にあった国立林業試験場内にあった。
で、第一巻一~三号でのタイトルを見ると、木材強度や木質構造に関係するものが多いように思った。例えば「使用応力決定因子(大澤正之)」「木材の理学的性質(矢澤亀吉)」「積層木材(平井信二)」「九州産構造用木材の強度(渡邊治人)」「木造住宅構造(中村源一)」。これらの著者のうち、大澤・矢澤の両先生はのちに北大の教授となられている。また「木材強度の徹底的研究」「木材学者の奮起を望む」という気になる表題のものもある。いずれも編集長(?)である田中勝吉先生の作。
他の学協会の動向も把握できる。第五巻二号(一九五〇)には「日本木材保存会の設立」と題した芝本武夫先生の記事がある。本誌の発行元「日本木材保存協会」は一九二四年の「木材保存研究会」発足後いくつかの組織変更を経て現在に至るわけだが、一九四八年に「日本木材保存会」に改組され、一九五五年になって同会の業務は木材加工技術協会の木材保存部会に継承されているのだ。
ついでに言えば木材学会の創立は一九五五年でその件についても同誌に掲載されている。
ここまででやっと創刊後十年分。あと六十年以上も残っている。先は長いが、遺跡発掘作業のようでもあり、原稿ネタには苦労しなさそうではある。
(徒然亭)