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ブラックアウト
みちくさ vol.44 No.5 (2018)
原稿の締切が近づいてきた。ネタはいくつかあるにしても「今回はやはり高校野球、それも金足農業の件でしょう」と思っていた。そこに台風二十一号である。「内容を変えようか」とも迷っていた。
そして、九月六日午前三時過ぎの地震。あっという間の停電である。手探りで携帯を探し、情報を見ると、最初期には最大震度は安平町の6強、当地の震度は5強とある。別の部屋で何か落ちたようだったが、真っ暗な中でうろうろするのも、かえってまずいと思い、そのまま夜が明けるまで寝ることにした。
起きて別室に行くと、幸いなことにCDと書籍が飛び出し、床に散乱していたくらいで、食器類も含め、ほとんど無傷。
停電は続いていたのでラジオやネットの情報を探す。震源地は直線で三十数キロばかり東の厚真町で震度は7という。
その後、次第に被災状況が明らかになってきた。
そこで「火山灰地の土砂崩れ」「新興住宅地の液状化」といった、ある程度理解できる現象に加えて「ブラックアウト」というあまり聞きなれない事態に遭遇してしまったことを知った。
この前例としては一九七七年のニューヨーク大停電(落雷による、復旧に3日間を要した)が有名であるが、日本でこれほど広範囲・長期間にわたり発生したのはおそらく初めて、といわれている。
本州・四国・九州の電力会社の管轄区域間は交流線で連携が取られ、一部の発電所が送電を停止しても、容易にブラックアウトにはならないのだそうだ。また北海道電力と東北電力の間では海底ケーブル「北本連系線」によって電力の融通が可能になっているが、今回のケースでは機能しなかったといわれている。
ある識者は「この背景には事実上、北海道電力が孤立し、しかも経営規模が非常に小さいこと、また原発の再稼働が見通せない状況で、老朽化した設備の効率的運用が避けられなかったことがある。このような状況を招いた根本原因は、おそらく戦後の九電力体制(現在は沖縄電力を含む十電力)構築にさかのぼるのではないだろうか。ある意味、JR北海道の置かれた状況と似ているようにも感じられる。この改善は北電の負担とするより、むしろ国費を投入すべきである。」といっている。
(徒然亭)