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いじわる爺さん

みちくさ vol.43 No.6 (2017)

先日、木材学会「木材強度・木質構造研究会」が静岡で開催され、それを覗いてきた。プログラムは安村基先生の「CLT」を話題にした講演を中心に組まれていた。これは実に濃い、示唆に富んだ内容を含んでいたのであるが、この件、後日、木材工業誌で紹介予定とのこと、ここで触れるのはよそう。乞うご期待、といったところである。

さて、某日、某所で、某先生、小生に「我々、年寄はいじわる爺さんになるべきである」と、話かけて来られた。いささか唐突でもあったので、そのときは曖昧な返事をしたと思う。

そのことが直接の引き金になったわけではないが、先日の建築学会で、まだ比較的若い研究者や学生諸君の講演内容に対して、若干アカハラに近い質問をしてしまった。それも複数の人に対してである。おそらく「誰?あのうるさい爺さん」と思われているに違いない。

筆者が建築学会で初めて発表したのは三十年以上も前のことである。当時の発表件数は少なく、会場には三十人程度だったと思うが、その最前列に、今では「伝説の木質構造学の権威」とでもいうべき、G先生が必ず座っておられた。そして、構造系の講演が始まると、決まって「この内容については、私がかつて報告したことがあります。その論文を読みましたか」といった内容で質問されたものである。

この話を聞いたのだろう、翌年、それと同様のテーマで発表した後輩たちは、開口一番、「Gの論文によれば、云々」と始めた。おかげでG先生の質問がずっと減ってしまった。

そういえば木材学会などでも、かつては(今も?)各セッションにはそれぞれ「主」みたいな大先生が鎮座されていた。そして発表が終わるや否や、的を射た、あるいは、ときには本題とはあまり関係なさそうな、想定外の質問をされるのである。したがって若い人はもちろん、中堅どころの登壇者でも、相当緊張しているようであった。場外では、

「○○先生、いた?」

「今日はいないみたいよ」

「よかった!」

という会話もよくあった。

聞くところによれば安村先生も退官間近とのことである。いい「いじわる爺さん」になってほしいな、と思う。

(徒然亭)

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