鉄・音・2
みちくさ vol.42 No.4 (2016)
古いVHSテープのいくつかをDVDにダビングしようと棚を眺めていたら、かなり以前に録画していたビートルズ特集を発見した。正味五時間分くらい、しかも三倍速なので画質は恐ろしく悪い。これを懐かしさ半分で、全部見てしまった。
彼らのレコード・デビューはイギリスでは一九六二年一月である。日本デビューはその二年後で、そのさらに二年後、六六年の六月末から数日間、東京の武道館で最初にして最後の日本公演が行われた。それからちょうど五十年を経たのを記念した番組がいくつも放映されていた。
現在、高齢者世代になってしまったわれわれは、それにリアルタイムに遭遇していたことになる。もっとも、僕はこの「騒ぎ」を、どちらかといえば、やや冷ややかに見ていた方であり、のちに彼らのアンソロジー等を含めた正規発表音源のほぼすべてと、数枚の非正規盤までを収集することになるとは、当時は思わなかった。
ビートルズ関連の情報を調べてみると、六六年というのは、重要なターニングポイントになった年であることが分かる。つまり日本公演のあとの八月を最後に、大規模なライブコンサートを止めてしまったのである。
確かに日本公演の直前まで制作していた、アルバム『リボルバー』を聴いても、「これらをライブで演奏するのは、当時の技術では無理だわな」と感じる曲ばかりである。翌年、制作に半年を費やした『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』が発表された。そして七一年に正式解散となる。
この間オリジナルアルバム十三セット、それ以外のものを合わせて二百何十曲かがリリースされているわけだが、解散後も再編集盤や新発見のものが続々発売されている。おそらく四百曲近くはあるのだろう。
このなかで「鉄道」に関連するものを探してみると、とりあえず二曲発見。
一つは有名な「ティケット・トゥ・ライド」、邦題「涙の乗車券」。当初、シングル盤で出た。
もう一つは「ワン・アフター・909」。解散間際のアルバム「レット・イット・ビー」に入っている。ただしこの曲、ジョン・レノンがビートルズ結成前、十七歳時の作品で、「909」とは列車番号である。
(徒然亭)