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ヤシの害虫・「タイワンカブトムシ」
木くい虫 vol.37 No.6 (2011)
子供たちの憧れの昆虫はなんと言ってもカブトムシである。読者の中にも子供の頃、カブトムシを採集した経験を持っている人も多いことだろう。生きたカブトムシ類の輸入が認められたので、最近ではヘラクレスオオカブトやアトラスオオカブトのような大物を見たり、飼育したりする子供たち(大人も?)が増えている。
ところで「タイワンカブトムシ」という種をご存知だろうか?以前は学名(Oryctes rhinoceros )から「サイカブト」と呼ばれていた種である。本種は東南アジア原産であり、もともとは日本に棲息していなかったが、今では沖縄本島以南の各地に分布している。おそらく植物と一緒に持ち込まれたものであろう。本種は、幼虫がヤシの幹に食い入る大害虫である。このように海外から侵入した種が日本の農林業に大きな害を与えることがあるので、昆虫の持込には十分注意する必要がある。アメリカから進駐軍とともに日本へ侵入したアメリカシロヒトリや、反対に日本からアメリカへ侵入したマメコガネ(アメリカではJapanese beetleと呼ばれている)などその例は多い。
タイワンカブトムシは冬を除いてほぼ一年中見ることができる。しかし、本種は雄でも角が短く、子供たちに人気があるとも思えないので、わざわざ採集に行く人もいないだろう。筆者は、初めての海外出張でインドネシアを訪れたときに本種を採集した経験がある。国内では、昨年5月に西表島で採集した(写真の個体)。いずれも灯火に飛んできたものであり、まだ幼虫の加害状況を観察したことは無い。
カブトムシの仲間は本来熱帯起源の昆虫であり、我が国には本種の他に、カブトムシ、コカブトムシ、クロマルコガネの4種が棲息するだけである。大型のカブトムシが生息する熱帯の森で昆虫採集を行うことが筆者の夢であったが、やっと実現しアトラスオオカブトやゾウカブトを手にいれることができた。
(M・H)