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モドキとダマシ、似て非なるもの

木くい虫 vol.39 No.2 (2013)

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コウチュウ目の中には○○モドキ科、○○ダマシ科という名前の科がある。モドキやダマシは「似て非なるもの」という意味である。ゴミムシダマシはゴミムシに、テントウムシダマシはテントウムシに、ハムシダマシはハムシに、カミキリモドキはカミキリムシに、それぞれに似ていることを意味する。コメツキムシに似ているという意味のコメツキモドキとコメツキダマシという名の科もある。「どちらがコメツキムシにより似ているのであろうか?」と考えてしまう。さらにはニセクビボソムシやニセマキムシ(○○虫の偽者)というありがたくない名前の科まである。ニセクビボソムシ科はたしかにアリモドキ科のクビボソムシ類に似ている。いずれの組み合わせも近縁な仲間ではなく、他人(他虫?)の空似である。

ここで紹介するニホンホホビロコメツキモドキは、日本産のコメツキモドキ科で最大の種である。名は体を表し、本種は日本に分布し、頬が広い(雌の頬が左右で異型)。本種の幼虫はメダケを食害するため竹材害虫として知られているが、個体数はあまり多くなく、その被害が問題になることはほとんどないであろう。写真左はオオダイルリヒラタコメツキ(コメツキムシ科)で、写真右が主役のニホンホホビロコメツキモドキ(コメツキモドキ科)である。この両種が似ていると思うかどうかは読者次第である。

筆者はパナマに滞在中に美しいコメツキモドキを採集した(と思った)。帰国後ゴミムシダマシの専門家に見ていただいたところ、本種はコメツキモドキ科ではなく、ゴミムシダマシ科のAcropteron 属であることが判明した。昆虫の専門家を自負する筆者もみごとに騙された。コメツキムシに似ている(とされる)コメツキモドキに似ているゴミムシダマシである。こうなると、何がなんだかわからなくなる。

(M・H)

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